医療用ウィッグはなぜ高いのか
医療用ウィッグとは抗がん剤治療や脱毛症などによって髪が抜け落ちてしまったときに使用するウィッグです。直接的な医療における病気治療に使われるわけではありませんが、病気の治療中などに、髪の毛がないことによって起こる社会的な支障を解消するのに使われます。
少しずつ広がりつつあるアピアランスケア
現代の日本では残念ながらそうした病気の治療に対する理解が十分であるとは言えません。髪の毛がないことにより、奇異の目で見られたり、非常に少ないとはいえども心無い言葉を投げかけられたりすることもあるでしょう。病気そのものの治療もひとつの戦いではありますが、そうした周囲の目と戦うということもひとつの戦いと言えるでしょう。
現在ではアピアランスケアと呼ばれる、治療中の外見に対するケアに関しても少しずつ研究が進み、民間も含めてそうしたケアを行う体制が整ってきているのです。
医療用ウィッグはそうしたアピアランスケアの一環です。頭髪という最も目立つ部分をケアすることによって社会的な支障や患者の心のケアを行うことができます。
医療用ウィッグひとつを作るために必要なコストは
医療用のウィッグというものは大きく分けて二種類あります。人毛でできたものと人工毛によって作られたものです。人毛というのはその名の通り人の髪の毛です。ウィッグを作るためには一般的に31センチメートル以上の長さの髪の毛が必要だと言われています。基準となる長さが中途半端なのは、もともとの基準がヤード・ポンド法を基準としているからです。
人間の髪の毛というのは約1か月に1センチ伸びると言われています。30センチの髪を伸ばすためには単純に計算して2年半がかかることになります。もちろん髪を提供する人間も髪の毛を根元から切るわけではないため、不自然ではない髪の毛の長さから伸ばしたものを使うことになるため、伸ばすためにはそれだけ長い期間がかかります。
どれくらいの人の髪の毛を集めれば人毛のウィッグひとつが作れるか
ひとつのウィッグを作るために必要な人毛の量は20人から30人ほどです。
それだけの人毛を確保するにはそれに見合った費用が必要になります。また、ウィッグを作るためには髪の毛を集めるだけではできません。その髪の毛を同じ長さにまとめ、トリートメントを施し、製作するウィッグのサイズに合わせて植え込んでいくのです。そのためにも別途費用がかかります。製作の際により自然な髪の毛を表現するためには現在の技術では機械で作成するよりも人の手で植えた方が圧倒的に自然な仕上がりになります。そのため最高級の医療用ウィッグとなるとひとつで数十万円の価格になってしまうのです。